コミュニケーションと「報・連・相」

常務取締役 山中宏美

会社の経営結果を出す2大要因としてよく言われることは「戦略能力」と「組織能力」であると言われます。そして筆者がいろいろな会社に出入りをさせていただき感じることは、経営者の皆様方はたいへんよく勉強をされ情報を収集されて「戦略構築」は遜色なくできているように思われます(もちろん戦略に問題ありというところも多々ありますが)。では、何が会社の経営結果を左右するかと言うと「組織能力」に由来することが結構多いように感じます。この「組織能力」が高いか低いかを判断する切り口はいろいろありますが、集約しますと、「報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)」と「2S(整理・清掃)」を見ると大方判断できるような気がします。本稿では「報・連・相」およびその背景にある「コミュニケーション」について述べてみたいと思います。

「コミュニケーション」と言う言葉は完全に日本語化してしまった言葉なのであえて意思疎通などという訳語をいれなくても社会的に認知されています。語源はラテン語で「共有する、分有する」と言う意味だそうです。では、何を「共有する、分有する」かと言うと、ひとつは「情報や論理の共有」です。会社という組織は、「上層部で決めた内容を、途中の管理監督者を経由して現場の方々が活動して成果を出す」ところですから、上層部で決めた内容が、下部組織に向かって正確に共有できていないととんでもないことになります。また、現場でおきていることが上層部で共有できていなかったら迅速な対処などとれません。このように、組織の血液にあたる指示命令や情報の伝達が「情報や論理の共有」です。もうひとつは、「気持ち・感情の共有」です。自分の気持ちや感情がわかってもらえなかったり、相手の気持ちがつかめなかったりするとコミュニケーションがうまくいっていないと感じます。組織にあてはめてみると「円滑な人間関係の構築」が麻痺しているとか、うまくいっていないということになります。

それでは「報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)」がどうコミュニケーションと関わってくるか考えてみたいと思います。

コミュニケーションは、公式・非公式双方の意味合いで用いられます。「報・連・相」は、特に仕事に関連しますので、公式的な意味合いが大変強いと思います。筆者は研修で、『「報告」と「連絡」の違いは何ですか?』と言う質問を突然投げかけたりします。するとすぐに答えられない人がたくさんいます。

報告は「指示・依頼を出した人に、途中経過や最終の状況を知らせること」であり、指示・依頼を出した人を絶えず意識しておく必要があります。また、報告の指示・依頼事項には必ず納期・期限という時間的な制限がついてきますので、これも意識しておかなければなりません。途中報告や時間ごとの報告、日々の報告など、このタイミングを外しますとよい報告になりません。いろいろな会社で、上司から「あの件どうなった?」と言う質問をされている場面をよく見かけます。これは指示依頼を出したほうが「報告の遅れ」を感じて催促をしている言葉です。気持ちの共有ができていないと言うことにもなりますので、コミュニケーションがうまくとれていないことにもなると思います。

連絡は「仕事とか課題解決のためのグループメンバーに条件とか状況の変化をいち早く知らせること」であり、誰がグループメンバーであるかを正確につかんでおく必要があります。「関係者に対する認識が違って、あの人はメンバーの一員だと思わなかった」と言うことで、連絡するべき人に連絡漏れを起こしたということが発生します。連絡をもらえなかった人は、仕事が円滑に行きませんし気分も悪いでしょうから、連絡漏れや連絡ミスは絶対にしないようにしたいものです。連絡を忘れられた人も上手く仕事がまわらないでしょうし、グループでやる仕事の進捗にも大いに関係しますので注意したいものです。このようなこともコミュニケーション不足に起因すると思います。

それでは、相談はどうでしょう?相談は「自分の持っている問題点や不明点を知識・情報・技能を持っている人から取得して、正確な状況を把握し解決策を作成する」ことですから、やっぱり相談相手とのコミュニケーションがもとになります。相談内容の状況・条件及び関連する人たちの気持ち等を正確に伝えないといけませんので、コミュニケーション能力が必要です。また、最近の職場での状況を見ますと、解決策について何も自分なりの考えを構築せず、答えをいただこうとする行動が目に付きますが、やっぱりその条件・状況で考えられる自分なりの案をまとめて相談すると良い相談になり良い結果につながってくると思います。

組織能力の高い会社・職場にしていくためには、絶えず全社員の「コミュニケーション能力」を高め「報・連・相」が円滑に廻るようにしていきたいものです。

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