不況克服に立ち向かう企業の具体的事例に学ぶ

株式会社MELコンサルティング シニアコンサルタント 太田義則

米国発の金融危機の影響を大きく受け、かつてない規模と速さで景気後退が進み、先行きに不安が高まっている中、生き残りをかけた競争も激しさを増している。
その中で、私どもがご支援させていただいた企業様が取り組み結果を出された、具体的事例を紹介し、明日への活路の一助にしていただければ幸いである。

事例1

S県K市の自動車整備販売業者「A自動車」は創立1977年で32年の歴史を持つ従業員23名の会社であり、軽自動車販売を主流に、車検・点検・整備・板金塗装の事業を営む会社である。年2回(2日間)の春・秋に展示会を定期開催し、その各イベントには500人が参加され、現有10,000人顧客の安定化を図っている。
ご多聞にもれず、車の売れ行きは対前年比11%ダウンと低迷する中、A社の業績は順調に推移している。特にA社は、自動車販売もさることながら、徹底した顧客管理のもと、最も収益性の高い車検・点検・修理・板金塗装と、アフターメンテナンスを徹底していることに大きな特徴がある。
また、この厳しい時期にありながら、昨年秋に同社初のセールスレディ(25歳)を採用した。
このセールスレディの高いコミュニケーションスキルによって、お客様との高い信頼関係を構築し、地道で粘り強い営業活動で好業績を達成している。
この効果は、営業部全体に伝わり、組織の活性化にも貢献している。お客様からの評判も上々である。
さらに、塗装に卓越した○○さんの場合には「○○塗装技能道場」という個人名を冠した育成システムを作り、継続的に実施している。そうすることにより、個人に仕事への誇りと若手への技能伝承への責任意識を持たせている。

事例2

S県S市に本社を持つ、大手二輪メーカー下請け(燃料タンク製造)と自社製品(家庭用耐久商品)を営む製造業B社は年商60億円(186名)の企業。この度の環境変化により、売上高が38%ダウンと厳しい状態となる。そこで、社長は、「徹底した"種まき"と"仕込み"」をスローガンに、"雇用は守る"を前提に、組織を横断的に「活性化プロジェクト」を編成し、「売上の拡大化プロジェクト」「変動費の削減プロジェクト」「固定費の削減プロジェクト」「新製品開発プロジェクト」「人材育成プロジェクト」の5つを新設して展開された。
その結果、「売上の拡大化プロジェクト」において、全く営業経験のない技術部長を中心に営業メンバーとのペア拡販体制をとったことにより、23社に絞り込んだ企業にアプローチし、4社新規受注獲得となる。「自社の技術的な強み、弱み」を明確に情報提供され、顧客の問題解決に専門的技能が功を奏した。
また、「新製品開発プロジェクト」では、ここ5年間において、親会社を含むお客様よりオファーがあったものの、お断りせざるを得ない製品についての内容を分析検討し、それを徹底研究し、自社の技術開発に成功され、そのノウハウを親会社に働きかけ、技術提携によるロイヤリティをいただける契約が最近締結された。
必ず夜明けは来る。その時に、どこの会社よりも早く立ち上がれること。そのためには、体力がなくては立ち上がれない。その体力の根源は"人材と資金"である。「厳しい環境ほど人は成長するし、知恵がでる」と社長は力説する。

2社の少ない事例ですが、不況といえども、P.F.ドラッカーが言われた、いつの時代でもやるべきことは次の内容ではないでしょうか。

「会社がなすべきこと」

  • 現在の事業の業績向上
  • 事業機会の探求
  • 新規事業の開拓

「経営者の役割」

  • 会社を方向づける
  • 経営資源の確保と配分
  • 人を活かす

最後に、トヨタ自動車(株)奥田碩相談役のお言葉を紹介し、まとめとさせていただき、今こそ新たなる挑戦に期待したい。

【この時期、自社の健康診断をするチャンスを与えられていることを知る】

  • 何があっても対応できる体制・シクミづくりが経営の基本
  • 自らの知恵とがむしゃらな闘争心を持つこと
  • がつがつしたハングリー精神を持つこと

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