企業変革再考

株式会社MELコンサルティング 代表取締役会長 安田芳樹

P.F.ドラッカーは著書「ネクスト・ソサエティ」で、そこそこに成功した企業や経営者が陥りやすい間違いの一つとして「成功の否定」を挙げています。「一度成功体験を味わうと傲慢になり現状に満足する。そしてあるべき姿を目指して改革することをしなくなる」ということへの戒めの言葉です。成功体験を否定し経営のフリーズ状態を解き、次なる成長戦略を実現するためには、企業変革のための「心得」が必要です。

「不易と流行」を実践する

「経営は不易流行」と言われます。しかし、多くの会社が変えてはいけないもの(不易)と、変えなければならないもの(流行)が明確になっていません。自社の経営資源・シクミ・常識と習慣の抜本的な見直しが出来ていないのです。「聖域なき変革」を進めるには、会社と経営環境のマッチング・レベルを今一度、真摯に分析してみることです。
分析キーワードは、「残す(続ける)・捨てる(やめる)・改める(変更する)・変える(新しくする)」の4つの軸で、まずはそれらの徹底見直しです。

評論家から主人公へ変身させる

幹部をはじめ社員の人材の質は悪くないのに、会社の中に評論家が多く、意見や発言は多いもののそれを誰も実行に移さない、結果の出ない理由を他人や他部門の批判にあてる、行動力が伴わず自ら手足を動かそうとしない・・・。しかし、今、企業に評論家は要りません。必要なのは批判や待ちの姿勢の人材ではなく、自らのアクションで組織を動かしていこうとするエネルギーを持った人を作る(作れなければ集める)ことです。

揺さぶりによるミドル改革をねらう

会社内に改革の気風を広げるには、経営トップの旗振りやリーダーシップの重要性は言うまでもありませんが、それと同等、あるいはそれ以上にミドル(管理者層)の意識改革が大切です。仕事での実績があり現場レベルでの影響力が大きいミドルの考え方が組織に及ぼすインパクトは重かつ大です。ミドル主体での改革案の提案、トップマネジメントとの直接対話機会の増加、あるいは人事・処遇面での刺激策も含め、ミドルの持つパワーを揺さぶりにより増幅させることが肝心です。

人の「活かしきり」を徹底する

人を活かす経営とは、強みを活かし適材適所でやる気を引き出し、本人の自己実現が可能な環境を作り結果を正当に評価する、と言うことになるのでしょうが、活かしきりの極意としては、経営者としての人を見る眼が問われそうです。改革に必要な人材は、単に優秀であるとか、頭がよいと言うことではなく、経営の考え方に深く共感し、その人材が「能力」「情熱」「考え方」の3つの面で期待に応えるだけの要素を備えてくれているかどうかを見極める眼を持つことが大切です。

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