決算書とは、貸借対照表とは
〜やさしい決算書の読み方(1)〜

株式会社MELコンサルティング 與田和泉

はじめに

決算書の読み方がよくわからない、会計について勉強を始めたいといった初心者の方を対象に、『やさしい決算書の読み方』と題して、今後5回にわたって、「決算書の仕組みや構造」「会計のあれこれ」「押さえておきたい経営分析」等について解説していきます。

コンサルタント與田和泉

 「やさしい決算書の読み方」の内容 

  • 第1回:決算書とは、貸借対照表とは
  • 第2回:損益計算書とは
  • 第3回:キャッシュフロー計算書とは
  • 第4回:ここが知りたい会計のあれこれ
  • 第5回:押さえておきたい経営分析

決算書とは

決算書とは、企業活動の結果や成果をまとめた書類です。主なものに次の3種類の書類があります。

(1)貸借対照表

ある一定時点(期末)の企業が持っている財産とその源泉をあらわしています。
これは、その会社が創業以来築いてきた財産の、ある一定時点(期末)での残高状況を示すものです。初心者には分かりにくい決算書ですが、企業にとってはとても大事な書類です。

(2)損益計算書

ある一定期間(1事業年度:4月〜翌3月、1月〜12月など企業の決算期間)の企業活動の成果をあらわします。
その1年で会社は儲かったか?損したか?がわかります。
初心者にとってもなんとなくわかりやすい書類です。収益(売上)から費用(経費)を差し引き、1事業年度の利益を計算します。

(3)キャッシュフロー計算書

ある一定期間(損益計算書の期間と一緒です)の企業のお金の出入りをあらわしています。
・営業活動でのお金(キャッシュ)の収入と支出
・投資活動でのお金(キャッシュ)の収入と支出
・財務活動でのお金(キャッシュ)の収入と支出
の3つに分けて、企業のお金の流れをあらわしています。
※会計上の利益と手許の現金は一致しません「勘定あって銭足らず」と言うことがあります。「黒字倒産」という言葉を聞かれたことがあると思います。企業はお金がなく支払手形の決済ができないと、銀行取引が停止され企業活動が出来なくなります(倒産です)。
貸借対照表や損益計算書では企業のお金の出入りの状況はつかめません。お金(キャッシュ)は企業の血液と言われ、お金がなくなると企業活動はできなくなり、たとえ会計上「利益」が出ていても倒産することがあります(これは、次回以降でお話しします)。

個人の貸借対照表

貸借対照表とは、ある一定時点の企業の財産とその源泉をあらわします。貸借対照表は、企業の資金の源泉である「純資産」と「負債」、その資金の運用の結果である「資産」で構成されています。と言われてもピンと来ないかもしれません。それではここで皆さんの『個人の貸借対照表』を考えてみましょう。

(1)個人の財産と言えば、現金、銀行預金、有価証券(株)、土地、家屋、自動車、ゴルフ会員権などが思い浮かびます。これらを資産と言います。
企業も一緒です。企業だと信用取引で商売をしていますから、受取手形、売掛金という資産や子会社等への貸付金という資産もあります。

(2)さて、皆さんが資産を購入(取得)した時には、その代金を支払って自分のものにしたはずです。全てを自分の手持ちの現金で支払ったと言う方は少ないと思います。住宅ローン、自動車ローンなどを組んで購入している方がほとんどだと思います。借金ですよね。住宅ローンだと20〜30年、自動車ローンでも4〜5年かけて返済しますね。
企業も一緒です。これは、貸借対照表の負債と呼ばれるものです。資産を取得するためにお金を借りる。お金を借りて、工場を建てたり店舗を建てたりします。土地も一緒です。会計上は借入金といいます。資産を取得するためのお金の源泉をあらわしています。

(3)それでは、持っている資産と負債がイコールかというとちょっと違います。皆さんも住宅などを購入したときは頭金を支払っているはずです。頭金の分は借金が減ります。貸借対照表では左側(借方)に資産を表示し、右側(貸方)に負債と純資産を表示します。頭金(自己資金)は純資産に相当します。頭金も資産を取得するためのお金の源泉ですね。

ここでAさんの資産と負債を書き出してみました。
Aさんの資産は、現金1,000千円、預金3,000千円、土地20,000千円、家屋15,000千円、自動車2,000千円で合計41,000千円であったとします。
一方借金は、自動車ローンが1,000千円と住宅ローンが30,000千円で合計31,000千円だとします。
このケースでは、Aさんの純資産は41,000千円−31,000千円=10,000千円となります。
仮に、今持っている資産を全部売り払い、借金を全て返済すると手許に10,000千円が残るということを貸借対照表があらわしています(資産が額面通りに売れるとして考えた場合)。
土地と家屋と自動車で37,000千円の価値があり、37,000千円で売れ31,000千円ある自動車と住宅のローンを返済すると6,000千円残ります。そのほかに現金と預金で4,000千円あるので手許に合計で10,000千円が残る事になります。これがAさんの純資産です。企業も個人の場合と同じで企業の持っている資産を処分し、その時点での負債(借金)を返済すると純資産の金額が残ることになります。

Aさんの貸借対照表

これで、貸借対照表では「資産−負債=純資産」という関係が成り立つ訳です。
つまり資産=負債+純資産でもあります。

企業の貸借対照表

(1)資産は、金銭、金銭的価値のあるもの、企業に将来何らかの収益をもたらす可能性のあるものをいいます。一年以内に現金化される流動資産と一年以上の長期にわたって運用される固定資産に分けられます。
流動資産の主なものは、「現金」「受取手形」「売掛金」「製品」「商品」などです。「製品・商品」はある期末に残っている製品や商品の金銭的価値をあらわしており、販売するためのもので売れば当然お金になります。
固定資産には「土地」「建物」「機械」「車輌」などがあり一年以上にわたって使用する資産です。

(2)負債には、一年以内に返済をしなければならない「支払手形」「買掛金」「短期借入金」などの流動負債と、元金の返済が一年を超える「長期借入金」「社債」などの固定負債があります。どちらにしても必ず返済しなければならない借金です。

(3)純資産は、通常企業を創業した時の元手である「資本金」と創業以来の毎年の利益の金額の蓄積である「利益剰余金」が主な内容です。これは返済する必要がない資金なので「自己資本」と呼ばれています【負債(借金)は借りてきている資金なので「他人資本」と呼ばれています】。企業の資産(財産)は、自己資本と他人資本で調達した資金をもとに運用した結果をあらわしています。

(4)貸借対照表の基本型は次の通りです。貸借対照表は、ある一定時点の企業の財産の残高をあらわし、その資産が自前の資金だけで調達できているのか?他人からの借金も含めて調達できているのか?をあらわしています。
基本的には、個人の資産と負債と同じように考えて下さい。資産を処分し、負債を返済した残りが純資産です。第5回経営分析のときにお話ししますが、資産の総額が10億円という企業が2社あった場合、B社は純資産が6億円で負債が4億円、C社は純資産が1億円で負債が9億円であれば、B社はC社に比べ純資産が多く負債が少ないと言うことで企業の安全性が高いと言えます(自己資本比率が高いといえます)。個人でも借金が少ないほうがいいですよね。

貸借対照表の基本型

今回は、決算書には3種類の書類があることと、貸借対照表とはどんな書類かについて基本的な仕組みについてお話ししました。貸借対照表がどんな書類かイメージしていただけたでしょうか?
次回は損益計算書についてお話しします。お楽しみに。

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