評価制度といったら人事考課制度
〜イキイキ風土を実現するための人事制度(2)〜

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 渡辺晴樹

『イキイキ風土を実現するための人事制度』シリーズの第2回目は、「評価制度といったら人事考課制度」ということについて、経営者及び人事・労務担当者を対象に解説する。
高齢化に伴う人件費の増加、従業員の士気の低下など、人事制度に関わる諸問題を抱えている企業は多く、緊急な対応が求められている。そのような企業では、まず人事考課制度を見直すことをお勧めする。人事考課制度は、昇給、昇進、昇格、異動などの処遇や能力開発に反映させる重要な役割を担っているからである。

渡辺晴樹

 「イキイキ風土を実現するための人事制度」の内容 

人事考課制度とは

人事考課制度とは、設定された基準に基づいて、従業員一人ひとりを公正・公平に評価する制度で、「査定の側面」と「育成の側面」の2つの視点がある。イキイキした風土を実現するためには、これからの人事考課制度は、「育成の側面」を重視した運用が望まれる。
なお、ウィキペディア(Wikipedia)によれば、「人事考課制度とは、1年間、もしくは半年・四半期などの一定期間の従業員の労働に対する評価をし、給与の昇給額や賞与の額に反映させ、または、昇進・昇格に反映させることである。」と説明している。

人事考課の目的

人事考課は、つぎのような目的で実施する場合が一般的である。

  • 1.人事考課の評価結果を昇給、昇進、昇格などに反映させる。
  • 2.評価期間中における仕事の成果や行動プロセスを公正・公平に評価し、賞与に反映させる。
  • 3.人事考課のプロセスを通じて部下の適正を把握し、人材育成や適材適所の人材配置を行う際の基礎資料として活用する。
  • 4.上司評価の結果と自己評価の結果について、面接を通じて十分な意見交換を行う。
  • 5.人事考課の結果を本人に通知することにより、社員一人ひとりの納得感を得られると共に本人の課題を明確にし、モチベーション(やる気)の向上を促す。

人事考課制度の基本的な考え方

人事考課制度は、公正かつ公平で、従業員が納得できる制度でなければならない。公正な人事考課制度とは、評価要素、評価基準、「会社が期待する人材像」などが明確になっていることである。公平な人事考課制度とは、部下への要求水準が統一され、評価者の評価が標準化されていることである。さらに、納得ができる人事考課制度とは、人事考課のやり方を公表し、評価結果を本人にフィードバックがなされていることである。従業員が納得できない人事考課は、手間暇かけて実施する意味がない。

人事考課の評価要素

人事考課は、1.課された仕事の成果(業績評価)、2.職務遂行能力(能力評価)、3.仕事に対する意欲・態度(情意評価)の3つの評価要素で評価する場合が多い。評価項目が抽象的になると、評価者の評価能力によって評価結果に差がでるという問題が生じる。評価項目はコンピテンシー評価にみられるような、どんな行動をとったかなど、評価者にとって評価しやすい工夫が必要である。

  • 1.業績評価
    業績評価とは、「仕事の遂行度」と「目標の達成度」で評価する。「仕事の遂行度」は、仕事の質(正確性、緻密性、段取りなど)、仕事の量(量、スピード、納期など)で評価する。「目標の達成度」は、予算、課題、重点業務などで評価する。
  • 2.能力評価
    能力評価とは、被評価者が勤務する職種の職務要件内容(知識、技術など)、業務処理能力、業務の難易度で評価する。
  • 3.情意評価
    情意評価とは、仕事に対する姿勢や態度を含む顕在化した職務行動のプロセスをみることで、被評価者の1.規律性、2.責任性、3.協調性、4.積極性などを評価する。規律性とは、日常の服務規律を守っていたかどうか。責任性とは、自分の守備範囲を守ろうとする意欲、細心の注意をもって職務に臨んでいたかどうか。協調性とは、守備範囲外だがチームワークにプラスになる行動、および守備範囲の内外を問わず、他と調子をあわせた行動をしていたかどうか。積極性とは、職務改善・提案、自己啓発、チャレンジなど、仕事に対して意欲的に臨んでいたかどうか。

人事考課の評価基準

評価基準は大きく分けて2種類の方式がある。一つは評価要素の段階毎に詳細な評価基準を明記した要素考課方式であり、もう一つは評価要素に対して具体的な行動例を書き出し、評価ランクは別途設定する着眼点方式である。要素考課方式は人材育成に活用することに強みがあり、着眼点方式は評価を行いやすいため評価の導入と定着に強みがある。両方式はそれぞれの特徴があり、どちらが適しているか、導入する企業の目的によって判断する必要がある。下記に着眼点方式の評価段階の例を示す。カッコの中の評価基準は、被評価者の自己評価基準である。

【評価基準(業績評価)】
A:期待した水準を上回った(完璧に達成できた)
B:おおむね期待した水準であった(おおむね達成できた)
C:期待した水準を下回った(もう少し頑張りたい)
D:期待した水準をかなり下回った(もっと頑張りたい)

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