損益計算書とは
〜やさしい決算書の読み方(2)〜

株式会社MELコンサルティング 與田和泉

前回は、「決算書とは、貸借対照表とは」ということで解説しました。今回は「損益計算書とは」について解説していきます。

コンサルタント與田和泉

 「やさしい決算書の読み方」の内容 

損益計算書とは

損益計算書は、『ある一定期間(1事業年度:4月〜翌3月、1月〜12月など企業の決算期間)の企業活動の成果をあらわします。その1年で会社は儲かったか?損したか?がわかります。』と前回お伝えしました。それでは具体的に内容を確認していきましょう。

損益計算書は一言でいえば、収益(売上)から費用(経費)を差し引いたもので、1事業年度の利益をあらわします(収益−費用=利益)。
企業の経営理念に基づき、その企業が扱う製品・商品・サービスを社会(お客様)に提供し、満足していただいた企業活動の結果を利益(もしくは損失)として計算します。

損益計算書の基本型

損益計算書の基本型

損益計算書には、5つの利益があります。上の基本型に示したように、(1)売上総利益、(2)営業利益、(3)経常利益、(4)税引前当期純利益、(5)当期純利益の5つです。

(1)売上総利益

それでは、1番目の売上総利益から確認していきましょう。
企業は、商品やサービスをお客様に提供し代金をいただきます。その収益が、「売上高」です。売上をあげるための費用が「売上原価」で、商品ならお客様に渡した商品の原価です。1個60円で仕入れたものを1個100円で売上げれば、「売上高」は100円、「売上原価」は60円となります。
この「売上高」から「売上原価」を引いたものが「売上総利益」(粗利益とも言われます)となります。この場合は、40円です。
この売上総利益から企業活動を行うための費用がまかなわれます。利益が出ていないと企業は活動ができなくなります。

(2)営業利益

2番目の利益は、営業利益です。本来の営業活動から生じる利益です。
企業は、「ヒト、モノ、金、情報」などの経営資源を使って活動をおこないます。
役員報酬、給与、賞与、法定福利費(社会保険料の会社負担分)、退職給付費用などの人件費や、家賃や減価償却費、保険料、旅費交通費、販売促進費、宣伝広告費、租税公課などのいろいろな経費がかかります。
この経費の合計額を「販売費及び一般管理費」といいます。この経費は、売上総利益でまかなわなければなりません。
「営業利益」は、売上総利益から「販売費及び一般管理費」を差し引いたものです。
これは、企業の本業の営業活動を行った結果の利益(もしくは損失)で、本業の活動からどれだけ利益をあげたかを示しています。

(3)経常利益

3番目の利益は、経常利益です。これは、営業利益に本業以外での収益である営業外収益をプラスし、本業以外での経費である営業外費用を差し引いた残りの利益で、企業の経常的な活動の結果の利益です。
営業外収益として主なものは、受取利息や受取配当金がありますが、本業が物販業で本社ビルの一部を賃貸で貸しているような場合の家賃収入や海外との取引結果の為替差益も営業外収益に該当します。
また、営業外費用として主なものは、支払利息や海外との取引結果の為替差損などが該当します。
経営者は、企業業績の良否を判断する指標として経常利益を重要視する傾向があります。

<※為替差損、為替差益って何?>
海外との取引で1ドル100円の時にドル建てで契約をし、10,000ドルの売上を上げたとします。海外の取引先から10,000ドルの入金があったら、通常は銀行でドルを円に交換します。売上時は、1ドル100円で10,000ドル分を売上げているので、売上は100×10,000=1,000,000円です。銀行でドルを円に交換する時に1ドルの円相場が円安で110円だったら10,000ドルは1,100,000円となり、売上との差額100,000円が発生します。これが為替差益です。100万円入金するところ、110万円が入金したので10万円が為替変動による利益となり、為替差益となります。
逆に円相場が円高で1ドル90円だったら、入金した10,000ドルを銀行で円に交換すると900,000円にしかならず、本来100万円入金するところ、90万円しか入金せず10万円が為替変動による損で為替差損となります(わかりやすくするため手数料などは除いています)。

(4)税引前当期純利益

4番目の利益は、税引前当期純利益です。通常の事業年度では、経常利益が税引前当期純利益と同額になりますが、通常の企業活動では出てこない収益や費用があります。これが特別利益や特別損失といわれるもので、特別利益や特別損失が発生したら経常利益にプラス・マイナスをします。
事業活動に不要になった土地を第三者に売ったとします。通常の事業年度は売買しない資産ですから、簿価(貸借対照表に記載されている金額)との差額が特別利益、特別損失となります。
簿価が3億円の土地を10億円で処分したら、7億円が土地売却益という特別利益となります。逆に3億円の土地が1億円でしか処分できないと2億円が土地売却損という特別損失となります。
火災や台風などで工場などの建物が焼失または倒壊し、使い物にならず取り壊します。この時、工場の簿価が5億円だとしたら、火災損失(または災害損失)という費用が5億円発生することになります。
このように、通常の事業活動では発生しない活動から出てきた利益は特別利益、損失は特別損失として経常利益にプラスまたは、マイナスします。
よく「業績不振で土地を売却し何とか利益を確保した」などの新聞報道がありますが、特別利益を計上して利益を確保したということになります。
みなさんも、決算書を見る時は税引前当期純利益が出ていても、「営業利益は出ているか?」「経常利益は出ているか?」それとも、「営業利益・経常利益は赤字なのに特別利益で税引前当期純利益がプラスになっているのか?」を見ていただきたいと思います。

(5)当期純利益

5番目の利益は当期純利益です。企業が1事業年度の活動をして最後に残るのは、法人税等を支払ったあとの当期純利益です。企業活動における最終的な利益です。
法人税等には、法人税・住民税・事業税があり、企業が1年間で獲得した利益(=税引前当期純利益)に所定の税率を掛けて計算し、その法人税等を差し引いた残りが当期純利益です。
企業は、一般的に当期純利益と過去の利益の蓄積である利益剰余金を加味して配当します。したがって株主や投資家は、投資先の良否を判断する指標として当期純利益を重要視する傾向があります。

<※補足>
法人税では益金−損金=課税所得として税金を計算します。益金と収益、損金と費用はほぼ一緒ですが課税の公平性という観点から微妙に違いがあります。資本金1億円以上の企業の交際費は、会計上は費用ですが、法人税法上は、損金として認められずその分は税金が増えます。また減価償却費についても、固定資産ごとに厳格に償却期間がきめられており、法定償却以上の減価償却費は認められません。また企業が支払う税金には、固定資産税や自動車税などもありますがこれは収益を上げるために必要な経費なので販売費および一般管理費のなかの租税公課という費用として処理されます。法人税等の実際の支払は、企業が決算を行ったあと2ヶ月以内に税務署に現金で納めなければなりません。

収益、費用、利益の意味

損益計算書であらわされる5つの利益を確認してきました。
ところで、「収益−費用=利益」の中の「収益」、「費用」とは何でしょう?
損益計算書の基本型の売上高・営業外収益・特別利益の3つが、企業が1事業年度に上げた収益です。
費用は同じく損益計算書の基本型の売上原価・販売費及び一般管理費・営業外費用・特別損失の4つが費用となります。
「収益は3つ、費用は4つ、利益は5つ」と覚えて下さい。
「収益−費用=利益」ですが、収益・費用・利益といってもいろいろなものがあることをご理解いただけたと思います。

企業が永続的に発展を続けていくためには、売上を拡大するだけでなく利益を上げなければなりません。
利益がないと仕入先への代金、社員への給料の支払いにも困ってしまいます。借入金で急場はしのいでも余計な支払利息が発生し、借入金の元金も利益と減価償却費の中から返済しなければなりません。
企業は利益を上げるために、収益向上(売上拡大)を目指し、一方で費用の削減(コスト削減)を図り利益をあげようと努力している訳です。
このことは、個人でも一緒です。個人の収益は会社員の場合は、給与や賞与などです。その中で生活に必要な費用(経費)を支出し、残額(利益)があれば預金できますが、お金が足りなければ借金をします。借金は毎月の給与(収益)から必要な費用(経費)を切り詰め、残額(利益)から返済していくことになります。

今回は、損益計算書とはどんな書類かについて基本的な仕組みについてお話ししました。損益計算書がどんな書類かイメージしていただけたでしょうか?
「勘定あって銭足らず」とは損益計算書では利益があって黒字でも資金繰りがうまくいかず倒産してしまうことです。
次回は、企業のお金の出入りをあらわすキャッシュフロー計算書についてお話しします。お楽しみに。

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