いま、この時代に売れる営業の極意を探る
株式会社MELコンサルティング シニアコンサルタント 太田義則
はじめに
平成不況、デフレ経済といわれ閉塞感のある“売れない時代”におけるお客様の購買行動の特徴は、一つ一つの商品・仕事を真剣に評価し購買行動に入る。それは、その商品・仕事に“価値ある本物”を求めているかに他ならない。
“本物”それは、提供する商品・サービスから、いかに利益をもたらすことができるかで決まる。その提供者が“価値ある人物”となり、その営業マンから商品・仕事を求めている。従って、お客様は販売のアマチュアには満足されず、真のプロ・セールスを求めている。
そこで、“いま、この時代に売れる営業の極意”を探ることとする。
売れる営業マンの3つの特徴とシクミづくり
売れる営業の特徴を見ると、営業マンが持つ3つの特徴と、営業体制のシクミづくりにある。“営業マン3つの特徴”の、第1は「営業職に対する絶対的誇りと使命感」を持ち、第2に「顧客満足に対する専門的な知識」があり、第3に「その内容説明など、分かりやすくツボを抑えた“プレゼンテーション力”」を備えていることである。
一方、その営業マンを活かす「機動力ある営業部隊」のシクミができており、個別対応から総力戦対応の営業部隊へと組織体制が確立されているところに大きな特徴がある。そこで、それぞれの中身を見ていくことにする。
3つの特徴と能力開発
1.営業職に絶対的誇りと使命感を備えている。
それは、次の2つの討議から創られる。
(1)自社コア・コンピタンス(中核的競争力)の洗出しと共有化
企業間の競争とは、本質的にコア・コンピタンス(中核的な競争力)を用いて市場の主導権を獲得しようとする競争にほかならない。
そこで、次の内容を洗いだし、自社のコア・コンピタンスから“セールスポイントの共有化”を図る。
- 1.わが社の「存在意義」、「存在価値」は何か。
- 2.お客様に高い評価を得ているものは何か。
- 「商品では」、「サービスでは」、「技術では」
- 3.競合他社の強みと明確に差別化しているものは何か。
- 「商品では」、「サービスでは」、「技術では」
- 4.わが社でないと絶対できないことは何か。
(2)部門コア・ミッション(核となる使命)の定義と期待役割の明確化
次に、仕事の存在理由をはっきりさせる“コア・ミッション”の定義化が必要となる。これは、核となる使命であり「仕事の存在理由」となるものである。
そこで上記のコア・コンピタンスからコア・ミッションを定義する。そして対市場に、対お客様に「部門・課は何が期待されているか」、「自分には何が期待されているか」が明確となり、営業部隊としての使命感が確立される。その作成過程は次のような枠組みとなる。
2.顧客満足に対する専門的知識の習得
〜提案書の充実がプレゼンテーション力向上につながる〜
売れている営業マンは、お客様の考え方の掌握がうまい。その視点は、[1]お客様が一番関心を持っているのは何か。[2]製品・商品・サービスのどんな点が、購買決定の要因となるか。[3]当社製品に対して、どのような評価をしているか。[4]他社製品についての評価はどうなのか等々。
それに応えられる専門的知識、技能、態度を持ちお客様の真のパートナーとして位置づけられている。従って、常に、「顧客の視点で商品を見る目」と「顧客の利用場面から商品を見る目」を養っている。
3.説得力のある提案書(プレゼン資料)を書く
〜提案書の充実がプレゼンテーション力向上につながる〜
説得力のある提案書を書くには、お客様の言葉を使い、お客様が理解・納得していただけるかを、常に考えながら作成していくことがコツである。そのポイントは、[1]簡単で分かりやすい。[2]何を言おうとしているかが一目で理解できる。[3]他社とどこが異なるかが明確にわかる。[4]お客様の要望のすべてに的確に答えている。
など、ポイントをはずさず、簡潔明瞭であることが肝要である。
- 1.表紙、はじめに、目次
- 2.提案の趣旨、目的
- 3.お客様の問題点の確認
- 4.問題解決の具体策
- 5.解決後のイメージ
- 6.実施計画、納期、期間
- 7.当社からの支援体制
- 8.費用(見積書)
- 9.付帯資料
「機動力ある営業部隊」のシクミづくり
〜3つの部隊を編成し、効率のいい組織体制の確立〜
(1)既存のお客様を深耕するために行動する「営業部隊」
(2)新規顧客の開拓と休眠客を専門に掘り起こす「特販部隊」
(3)後方支援部隊
この後方支援部隊とは、社内にいて電話・e-メール・ファクシミリ・ダイレクトメールなどを活用して、営業活動を行なうことで、訪問営業の行動効率を高めるための役目を果たす。
また、お客様からの電話や仕入先への対応、見積書、提案書、企画書などの作成なども 後方支援部隊の業務に組み入れ、訪問営業の業務を軽減させるのである。
こうした3つの部隊を一つにまとめ上げることによってはじめて、効率のよい 「機動力のある営業部隊」としての組織づくりと言える。
おわりに
売れる営業マンは“実行力”がある。「知っている、分かっている」ことと、“実行”とは違う。いいと思ったことは、即実行する。実行して結果が悪ければやり方を変えれば良い。実行して、成果を出す。 その答えは、現場でお客様との直接面談にある。