EQを活用して人間力UP!

株式会社MELコンサルティング 常務取締役 渡辺晴樹

EQとは

EQとは、Emotional QuotientまたはEmotional Intelligence Quotientの略で、「感情知能指数」と訳され、「自分自身と他の人達との感情を理解し、自らもモチベートし、自らの感情と他の人達との諸関係を効果的にマネジメントする能力」と定義されている。EQ理論の基礎は、アメリカのイエール大学ピーター・サロベイ教授とニューハンプシャー大学ジョン・メイヤー教授が1990年に発表した論文に起源を遡ることになる。EQ能力の概念の創始者であるピーター・サロベイ教授は、EQ能力を「人生をより良く生きるために必要な能力」と明解に定義している。
1995年にアメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンは著書「Emotional Intelligence」(邦題『EQ−こころの知能指数』講談社刊)の中で、従来、IQの高いことがビジネスに成功するための条件と考えられてきたが、「IQは成功のための必要条件ではあるが、十分条件となり得ない。成功するには、これに加えて高いEQが必要とされる」と主張した。日本では、このダニエル・ゴールマンの著書がきっかけでEQが広まった。IQ(Intelligence Quotient:知能指数⇒知的能力の測定)が100年の歴史を持つのに対して、EQは10年余りの研究期間しかない。

今、なぜEQなのか

モルゲン人材開発研究所の澤田富雄氏は、EQ能力の不足に起因する諸問題について、次のように指摘している。昨今、モラルハザードに起因する不祥事(不正転売、偽装表示、談合、粉飾決算、インサイダー取引)が産業界のみならず政治・行政・教育の世界にも及んでいるが、それは「倫理観」の欠如、「責任感」の不足、「勇気」の不足などが、その根底にあると考えられる。
社会では、凶悪犯罪が多発し、背景には近親者への「感謝の心」や「自己コントロール」の不足があると思われる。自殺者の激増も、失業や倒産が原因と報道されるが、「生命への考え方」、「生きる姿勢」、「自己肯定能力」など、内面の問題を軽視することはできない。
また、若者に多くみられる「自己中心主義」の行動は、「社会意識」や「人間関係のあり方」に問題があり、「無気力で無感動な若者」の増加も、自然の美や文学・音楽・芸術などに「感動する」機会が減少していることに原因がありそうだ。今やEQ能力の不足は、企業や社会に対して大きなダメージを与えつつある。

EQ能力を高めるには

職場では、「学業成績」は優秀で、いわゆるIQ能力は高いのに、なぜか対人関係がうまくいかず、職場をまとめることができずに、チームワークやコミュニケーションの面でつまずいている上司が少なからず見受けられる。原因は、IQ能力以外の能力、すなわち「やさしさ」、「思いやり」、「勇気」、「協調性」などのEQ能力が不足しているからである。
EQ能力を高めるためには、まず自分自身のEQ能力をアセスメントし、自己理解を深め、行動変容が求められる。実は、EQは多数の「スキル」から構成されている。スキルはトレーニングすることで、向上することができる。なお、EQの診断ツールとして、財団法人労務行政研究所が開発した「日本人のEQ能力アセスメント」が有効である。

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