厳しい時代の販売力強化策を考える
株式会社MELコンサルティング シニアコンサルタント 太田義則
本稿では、私が担当しているお客様が販売力強化策として取り組んでいる内容をご紹介させていただきます。
このご時勢、ご多分にもれず、このお客様も創業以来初めて経常損失となってしまいました。
社長は、「企業の使命は社会貢献であり、そのためには適正利潤を確保し法人税を納めることにある」ということを常日頃から唱えている方であり、たいへんなショックを隠せない状態でした。
現在、今期の経営計画に「顧客満足による販売力強化」を最重点課題に掲げ、企業変革に取り組んでいるところです。
コンサル実施の基本コンセプト
- 一人ひとりのお客さまから、購入点数・購入金額を増やす(既存顧客の深耕)
- 買っていただくお客さまの絶対数を増やす(新規顧客の開拓)
- 担当すべき役割、責任区分、動き方を徹底する(行動計画)
- 部門内・部門間協力支援体制を強化する
- 情報・意思伝達をルール化する
コンサル展開の内訳
第1Step : 関係者との個別ヒアリング
- 販売・営業の現状把握
- 課題とその対策の確認
第2Step : 攻め(攻略)
エリア戦略、目標売上高の設定(平均単価、顧客数、商品群)
- 既存顧客別のエリアマーケティング分析
- 環境分析・予測(機会、脅威)、自社能力評価(強み、弱み)
- ABC分析による顧客管理のあり方
- (1)受注点数、販売金額、顧客別動向
- (2)ブロック区分「攻略」「守備」「重点」「育成」
- 顧客別アプローチ策・・・受注・仕入・管理
- 攻略エリア、攻略業界・業種
- ターゲット顧客案とニーズ
- 差別化、販売促進策
- 具体的攻略先(企業名など)
第3Step : 守備(安定)
繰り返し買っていただく顧客管理
- クレームの撲滅・・・発生件数、内容、再発防止策
- 営業スキル向上策(テーマ、内容、進め方)
- 顧客管理・販売促進活動計画
第4Step : シクミ(組織)
業績を上げる「シクミ」をつくる
- 担当すべき役割、責任区分、動き方(行動計画)
- 部門内・部門間協力支援体制(後方支援策)
- 情報・意思伝達のルール化
第5Step : まとめ
- 販売力強化方針の設定
- 基本戦略・・・コンセプト、中期・年度目標の設定
- セグメント、ターゲット・・・攻略エリア、顧客ターゲット、ニーズ
- 販売チャネル・・・ディ−ラー、直売、提携先
- 中期・年度目標ポイント・・・販売促進策、生産、アフターケア、顧客管理
- 社内組織体制と人材の育成策
- 計画推進のチェック&フォローとその問題解決
コンサルティングを通じて重要視すべきことは3点ありました。
ポイント1 : 共有化と認識の一致
会社の現状を「ただ厳しい」の言葉だけではなく、予想損益計算書の数字をベースに社長・役員会・幹部会そして全社員にと上位職から一般社員へと共有化が必要です。全社員の認識を一致させ、社長としてトップとして成すべき約束ごと、全社員に期待すべきことを明確に問うことが求められます。
ポイント2 : 戦う組織の部隊づくりとそれぞれの担当役割の明確化
販売力強化策では、結果を出すことがすべてです。全社支援の組織営業として、個々のお客様とのキメ細かなコミュニケーションを前提に、「前方攻撃部隊と後方支援部隊」を組織化しそれぞれの担当役割を明確にすることです。それが組織に一体感がうまれ経営参画意識が生まれ活性化に結びつきます。
また、既存顧客の深耕は若手社員とし、新規の顧客開拓は、ベテラン幹部にすることが望まれます。特に、皆様方も取り組んでおられると思いますが、営業社員のみならず、専門知識を備えた技術担当者等とのペアセールスを組み入れることです。そこにコンサルティングセールスが生まれます。
ポイント3 : 計画推進のチェック&フォローとその問題解決
営業は、筋書きのないドラマです。営業日報の記載も必要ではありますが、すべてを営業メンバーは書ききれず、上長としても、記載内容の行間が読めないことが頻繁に発生します。
そこで、週間活動計画から日程計画におとされ営業活動がされていますが、上長とは毎日、口頭報告の習慣化が必要です。上長への報告により、個人の判断だけでなく、上長より、または、トップも含む適切なアドバイスが得られ、結果に結びつく可能性は高くなります。
また、見積書の記載内容のチェックは、お客様に提出前に必ず、上長・トップは目を通すことが重要です。記入漏れ、単価設定ミス、数量ミス、などによる損失防止です。
厳しい時代こそ、良い人間関係が組織を守り企業を発展させる
「良い人間関係=コミュニケーション」の具体策は「語り、聴くこと」。
- 企業の目指すべき方向、未来像、ビジョンを語る
- 何よりも「経営理念」をハッキリと語る
- 厳しい競争環境の中で勝ち残る「経営戦略」を語る
- 戦略を具現化した計画とその実践を語る
- 日々発生する問題を解決する方向と取り組みを語る
経営者の究極の役割は、コトバで「語り」、社員の声を聴くことではないでしょうか。