信頼の基点〜行動のコミュニケーション〜
会長 石黒重光
4月に新入社員が入社してきます。
この不況下においては、経営者・幹部・先輩から「即戦力として期待している」という厳しい祝辞、講演が当たり前のようになってきました。
新入社員も「一日も早く期待に応えるよう努力する」という答辞で、力強く決意を述べています。
ところが、入社式やその後の研修、職場に配属された後に、経営者・幹部・先輩が説き聞かせた事が社内で実践されていないため、新入社員が戸惑っている例が多く見られます。
・何事も経営理念に照らして行動すること
・他人の責任にせず自分の責任として仕事は取り組むこと
・新しい知識や情報は積極的に吸収しよう
・明るく元気に笑顔で挨拶しよう
と話した人達が、話した内容と矛盾する行動をとっています。
・即反応・即行動が経営理念なのに指示を仰いでもなかなか答えが返ってこない
・A課長はすぐに他部門の責任にして、自分の仕事を正当化している
・先輩の多くはスポーツ紙や週刊誌は読んでいるが、専門書や専門誌は見ていない
・B係長やC先輩はこちらから笑顔で大きな声で挨拶をしても返事がない
この矛盾に接した新入社員は、経営者・幹部・先輩に失望を感じ、会社の魅力に疑問を持ちます。
社内の相互信頼は、言葉によるコミュニケーション以上に行動によるコミュニケーションが大事です。
信頼は「ナニを言うか」よりも「ナニをするか」によって決まります。行動は言葉より雄弁です。経営者・幹部・先輩の言葉と行動にズレがあるときは、ほとんどの新人は行動を信頼します。
経営者・幹部・先輩はロールモデル(模範・手本・理想の姿)です。
新入社員は経営者・幹部・先輩のやることを真似し、応用し、その通り実践します。
もちろん、言葉によるコミュニケーションが大事なことは当然です。しかし、言葉と行動にズレがあるときは、新入社員が重視するのは言葉ではなく行動です。行動をホンネと受け止めます。
言うこととやることの不一致は、信頼関係を築くときに最もマイナスの働きをします。
言葉と行動が一致しない経営者、幹部、先輩が信頼されることはありません。
新入社員が入ってくることの時期は、日頃の自分の言葉と行動を真摯に見直し、その不一致を修正したいものです。
「言葉と行動にズレがあるとき、人々が重視するのは行動で、行動からその人の真実を受け止める」