中小企業の中期経営計画策定で大切なこと
〜自社の強みを知る〜

理事 シニアコンサルタント 太田義則

私どもは、中小企業を対象とした"中長期経営計画の策定"をご支援させていただく機会が数多くあります。
あのリーマンショック後の厳しい時代の環境下、中小企業の生き残り戦略を考える前提は、「自社の『市場価値』と『存在価値』の追求」にあると思います。
(1)自社の取り扱う事業は、現在・将来において『市場価値』はあるだろうか?
(2)わが社の『存在価値』は現在・将来ともあるだろうか?
その方向性を明確にする"事業領域の設定"の基本は、"環境分析・予測による機会・脅威分析"と、"自社能力評価の強み・弱み分析"の現状把握から始まります。
その際によくみられるのは、「自社の弱み」は多く抽出するが、今日までの存続・成長過程から、最も明確に理解できると思われる「自社の強み」の抽出数が少ないことです。
「この技術は、この業界ならできて当たり前、当然なこと、自社の強みとはなりませんよ」と経営幹部の方から異口同音に言われる言葉に、「当たり前のこと」や「当然なこと」などの表現が多いことに驚かされます。しかし、わが社が今日まで20年・30年と会社として存続できたことは、日々、研究開発・技術開発に、人の育成に、と時間と資金を投資され、強くしようとした結果が現在の"自社の強み"となり、今日の経営基盤を確立していることではないでしょうか。

自社の強みを知る4つの視点

そこで、私が提示している"強み"抽出の"4つの視点"とは次の通りです。

(1)利益確保の源泉を抽出する・・・獲得利益はどこから出たのか、その要因から強みを知る *バリューチェーン(マイケル・ポーター)の視点を活用
(2)優良固定客・仕入先業者からの評価から強みを知る・・・生の声を聞く
(3)お客様の視点で、売れている要因から強みを知る
(4)現場社員が語る内容から強みを知る・・・現場社員の声に耳を傾ける

「利益確保の源泉を抽出する」とは、経営数字の分析から始まり、その結果を踏まえ、強みの要因を探索します。
優良固定客の生の声を知るには、窓口営業担当者ではなく、トップの方の表敬訪問による直接確認が望まれます。トップ面談として、より突っ込んだ自社の強み・期待要望事項が把握できます。もちろん、厳しい評価コメントもあることも事実です。また、仕入先業者においても、同業他社・異業種との取引があるがゆえに、他社との違い(差別化・特徴)がより鮮明に浮き彫りされる可能性が高いと言えます。
そして、「現場社員が語る内容から強みを知る」についてですが、現場社員の特徴は、飾ることなく本音の意見を言うことです。そして、現場であるがゆえに"強み"の事実関係がより具体的となります。
反面、問題点(愚痴・不平不満を含む)が多く出ることも確かです。これも、真面目に取り組んでいる証ではないでしょうか。

自社の「技術力」を評価する5つの視点

もう一つ大切なものに「技術力」があります。次の内容をもとに、データ収集・分析・評価、顧客の満足度、幹部間・現場社員との話し合いの中から、自社の技術力を抽出します。

(1)保有設備とその稼働率
(2)技能検定などの有資格者数とその技術内容
(3)特許などの保有知的財産権
(4)外注政策と外注先の保有技術
(5)製作している製品群とその特徴

ここから抽出された技術力は、現業事業の満足もさることながら、次なる新規事業開発、新規顧客の開拓先の探索ならびに売り込むセールスポイントにもなります。

「もうだめだ!」と思うときが、仕事・事業の始まり

著者が尊敬するある経営者からお聞きした言葉です。今の時代、神から与えられた試練には7つあるといわれました。

(1)不況との戦い
(2)外圧との戦い
(3)ライバルとの戦い
(4)時の変化との戦い
(5)新技術との戦い
(6)価格破壊との戦い
(7)理不尽との戦い

この戦いに勝つには、しっかりとした、会社の基軸、常に心の拠り所を持ち、「本音でぶつかり」「もうだめだ!」と思うときが、仕事・事業の始まりといわれます。
今こそ、わが社の"強み"をもっと世にアピールし、夢を語り、進むべき方向を明確にし、新しい時代に果敢に挑戦していきましょう。

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