人材育成のための能力開発制度
〜イキイキ風土を実現するための人事制度(4)〜

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 渡辺晴樹

『イキイキ風土を実現するための人事制度』シリーズの第4回目は、「人材育成のための能力開発制度」について、経営者及び人事・労務担当者を対象に解説する。
弊社では、お客様から「能力開発制度や研修体系を作ってもらいたい」といった依頼がある。「その会社がどのような人材を必要としているのか、あるいは育成したいのか」が能力開発制度や研修体系を構築するためには重要なポイントであり、1.経営理念、2.人事理念(求める人材像)、3.経営ビジョン、4.経営戦略など、人材育成に関するあらゆる情報を確認しなければならない。また、能力開発制度の再構築には、経営トップの理解と長期の視点が重要である。

渡辺晴樹

 「イキイキ風土を実現するための人事制度」の内容 

能力開発の体系

「企業は人なり」、「人材の格差が業績の格差になる」などとよく言われ、従業員の能力開発は、企業にとって極めて重要な経営課題である。能力開発は短期的な側面(従業員教育)と長期的な側面(人材育成)があり、前者では個々の従業員の職務遂行能力を向上させるための知識・スキルの習得、後者では従業員に様々な職務の経験を積ませ、望ましいキャリア形成に導くことが重要である。
企業の成長・発展のためには、従業員を戦略的・計画的に育成しなければならない。企業が必要とする従業員を育成するためには、新入社員の採用から経営幹部の育成まで、全従業員を対象とした「能力開発の体系」が必要である。さらに、「経営理念、経営ビジョン、経営戦略」と「能力開発のベクトル」が一致することが望ましい。

能力開発の体系

OJT(On The Job Training)とは、日々の業務遂行を通して能力を高めていく職場内教育のことである。また、ジョブ・ローテーションとは、OJTの一環として行われ、従業員に多くの仕事を経験させるために人材育成計画に基づいて定期的に職務の異動を行うことである。
能力開発制度は、OJTを基本にOff JT(階層別研修、職能別研修などの集合研修)と自己啓発(自己啓発セミナー、各種通信教育講座)で構成されているのが一般的である。

能力開発の方法

能力開発の方法論として、「日常の業務遂行の中での能力開発」、「職場を離れての集合研修(Off JT)」、「自己啓発」の3つについて解説する。

・OJTとは
ウィキペディア(Wikipedia)によれば、「OJT(On-the-Job Training)とは、企業内で行われる企業内教育・教育訓練手法のひとつで職場の上司や先輩が部下や後輩に対し具体的な仕事を通じて仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを意図的・計画的・継続的に指導し、修得させることによって全体的な業務処理能力や力量を育成するすべての活動である。OJTはアメリカで第一次世界大戦中にできた手法とされる。チャールズ・R・アレン(Charles Ricketson "Skipper" Allen)は、造船所の現場監督を指導者として造船所内の現場ですべての訓練をすることを決めた。1917年、教育学者ヨハン・フリードリヒ・ヘルバルト(Johann Friedrich Herbart)の5段階教授法(予備、提示、比較、総括、応用)をもとにアレンが開発した具体的な職業指導法が、4段階職業指導法(やってみせる→説明する→やらせてみる→補修指導)であった。」と解説している。
OJTのメリットとしては、1.指導機会が日常的に得られる、2.反復指導が可能である、3.直接的な費用がかからない、4.フォローアップがしやすいことなどがあげられる。一方、デメリットとしては、1.指導者の時間的な負担が大きい、2.指導者の資質、能力、態度などにより、効果が大きく左右される、3.管理監督者が指導方法を習得していなければならないことなどである。

・Off JTとは
日常業務の中で仕事の指導を受けるOJTに対し、職場を離れて研修施設などで受ける集合研修をOff JT(Off the Job Training)と呼ぶ。従来、Off JTはOJTを補うものとして位置づけられていたが、職場を離れて基本的な知識・スキルを習得した方が効果的であるという認識から、Off JTを重要視する企業が増えた。
Off JTのメリットとしては、1.特定領域で体系的に習得ができる、2.専門的な知識を習得できる、3.職場を離れるので研修に専念できる、4.効果的な研修内容を組める、5.指導力のある講師で研修ができる、6.多くの従業員を効率的に研修ができる。一方、デメリットとしては、1.研修内容が実際の業務に対応していない、2.研修期間内は職場を離れるので職場の負担がかかる、3.費用が高くつくなどがあげられる。

・自己啓発とは
ウィキペディア(Wikipedia)によれば、「自己啓発(じこけいはつ)とは、自己をより高い段階へ上昇させようとすることである。より高い能力、より大きい成功、より充実した生き方、より高い人格などの獲得を目指す。」と解説している。
自己啓発の主要なテーマとしては、生きがい、成功哲学、積極的態度、行動力・スピード、セルフコントロール、集中力、決断力、人間関係、人間的魅力、情報収集 、思考法 、問題解決などが一般的である。

オピニオン一覧へ戻る

▲このページのトップへ