今こそ組織のマネジメント力を育成する

マーケティング本部 楠祐紀

東日本大震災以降、不確実性の高い経営環境が続いております。円高に伴う国内製造業の海外移転の検討や、内需が停滞する中での販路拡大戦略など、中小企業にとって逆境を機会に変えて取り組まなければならない状況といえます。
私の担当するクライアント先では一部のプレイングマネジャーの高業績に頼った経営をしているケースが少なくありません。マネジャーがプレイングに専念することで部門後継者の育成や組織化が後回しになるため、いつまで経っても状況が良くなりません。マネジャーが自身の得意領域ばかり取り組んでいては企業の生き残りは不可能です。
今回はどのように組織のマネジメント力を高めればよいかについてご紹介します。

日ごろPDCAサイクルをまわすことに取り組んでいると自負されている方は多いかと思います。効果的に結果を残すためには、その質を高める工夫をしなければなりません。

1.計画の質を高める

経営課題からブレークダウンされ、取り組むテーマは明確になっているものの、結果的に達成できないのであれば、計画作成の質を高める必要があります。
まずは目標とする達成度合いや達成イメージを定性的・定量的に設定します。その上でいつまでに実行するかを具体的にスケジュール化し、その担当を決定します。
くれぐれも、マネジャー本人が取り組みテーマの大半を担当するような計画にはせず、課員の力を活かす育成の視点も盛り込んだものにしてください。「自分でやればスピードも上がり、結果も期待できる」と考えてしまうかもしれませんが、ここはあえて任せてみることです。自分一人だけがやるのではなく、率先垂範して組織を牽引するリーダーシップを発揮することが重要です。
誰がどのくらい担当するのかは、マネジャーと課員が合議の上で決定するのがコミットを引き出す上で望ましいでしょう。当たり前の話ですが、担当や納期のない無責任な計画は計画とはいえません。達成できないということは、計画のどこかに、「これはやらなくても良い」と思わせる要素が含まれているということです。ぜひご確認ください。

2.振り返りの質を高める

計画偏重に陥ったり、計画をやりっぱなしにするケースは少なくありません。計画をやりきるためには振り返りを必ず実践することが求められます。
一番避けたいのは、できないことを指摘、追及するだけの犯人探しに陥ることです。これではできない人間のモラールが更に低下するだけで、能率が下がります。「それでも這い上がって来なければ見込みがない」と言われる方も中には見受けられます。しかし、自発的に這い上がって来ることができれば、何も言わなくても目標達成するのではないでしょうか?ただ攻撃するだけで、改善案や代案も出さないのは育児放棄同然で、部下はマネジャーを信頼しなくなります。振り返りの場は部下に気付きを与え、成長させるOJT機会となります。ぜひマネジャーの方は問題解決力と質問力を活かし、ティーチングとコーチングを使い分けた計画的かつ気長な部下指導を心がけてください。実施内容の反省点を踏まえ、修正計画を部下の口からいつまでに実施するかを言わせるのが皆さんの仕事です。必要性に応じて現場でのOJTを実施してください。

不確実性の高い環境を乗り越えるためには、組織の人材の充実化を図る必要があります。そのためにはあえて時間をかけて部門後継者育成に取り組むことが近道となります。

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