中小企業こそBCP(事業継続計画)が必要!
常務取締役 山中宏美
BCP(事業継続計画)とは?
中小企業経営者の皆様、BCP対策は万全でしょうか?
BCP(事業継続計画)とは、企業が緊急事態に遭遇した場合に、経営資源・資産の減少を最小限に抑え、中核となる事業の復旧をいち早く可能にするために、予め立案しておく計画のことです。
緊急事態とは、例えば、(1)自然災害危機(地震・火山・気象災害等)、(2)健康危機(感染症・食品衛生等)、(3)環境危機(化学物質汚染、地球温暖化等)、(4)社会危機(国家情勢・情報漏洩等)など、突然発生する事象を指します。
では実際、そうした緊急事態に備え、BCPの策定を行っている中小企業はどのくらいあるのでしょうか?
以下のグラフは、静岡県内で行われた、BCP対策実態調査の結果です。
BCP(事業継続計画)実態調査 【出典:静岡県産業経済部】
2009年度と2011年度の数値を比べると、BCPに関して「策定中・策定予定・計画に盛り込んでいる」と回答したのは、31.4%から47.2%と上がっています。しかし、「予定なし・知らなかった」と回答したのは、50%を越えているのが現状です。東海地震が30年以上前から想定されている静岡県でさえこの数字です。東北地方を除けば他県はこの数字がさらに高いものと推定します。
中小企業は、もともと経営資源が豊富ではありませんので、緊急事態発生のダメージからの回復に時間がかかります。特に資金面における問題は致命傷にもなりかねません。
そうならない為にも、事前の準備が大企業よりも必要になります。出来うる限りの事態を想定して、事前の準備をしておくことが必要でしょう。
また、出来うる限りの準備をしておけば、いち早く復旧して社会的貢献が出来るばかりか、事前準備の周到さによるお客様からの信頼も勝ち得る事にもつながる筈です。
BCPの作成ステップ
BCPの作成は以下のステップで行います。
- 第1ステップ・・・方向付け・目標・ビジョンの確立
- どのような方針、社内体制で行くかの確認・検討
- 第2ステップ・・・リスクの確認(調査・発見)
- チェックシート、フォローチャートでの分析
- 第3ステップ・・・リスクの評価(測定・予測)
- 発生頻度×発生強度、危険情報、リスクの前兆確認
- 第4ステップ・・・リスクの処理手段の選択
- 判断基準→最小の費用で最大の危機処理効果
- 回避、除去、保有、転嫁等
- 第5ステップ・・・社内研修・訓練などによる社内浸透
- 定期的な訓練を実施し、時には内容の修正も行なう
経営資源面での対応
緊急事態では、経営資源(人・モノ・金・技術・情報)に対して強烈な影響が及ぼされます。その早期の確保と復旧こそがBCP作成のポイントになります。
- 【人】
- 経営資源での一番の基盤になっている「人」の早期確保が重要です。人の安全面・連絡網の確保及び代替機能が働くようにしておくことが大切です。
- 【モノ】
- 設備面では復旧・修復の迅速な対応が重要です。また材料・仕入れ品の安定的な確保と、仕入先、納入ルート・手段の多重化が必要です。
- 【金】
- 売上停止・入金遅れ・代金回収遅れ等による資金繰りの対策が重要です。
- 【技術・情報】
- 技術面での対応は設備面での対応・人の対応と重複します。情報面での対処はバックアップ機能の精緻さが必要になります。
おわりに
経営計画作成において、BCPは、今後ますます重要な位置を占めるようになってきます。「転ばぬ先の杖」と諺にもあるように、準備をしっかりして緊急事態に対処していきたいものです。経営資源・資産の脆弱な中小企業ほどBCPを作成して、いざと言う時に慌てることのないよう対処したいものです。